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理学療法士として、スポーツに関わるということ
今回は理学療法士の資格を持ち、トレーナーとしても活躍されている、宝塚医療大学理学療法学科の沼澤先生に、理学療法士の資格とスポーツトレーナーの仕事について伺いました。
最初は、地域の高校生のサポートからでした
Q:トレーナーの仕事に就いたきっかけはなんですか?
最初は、地域の高校生バスケットボール選手のトレーナーからでした。元々スポーツ選手のサポートを、できるだけ選手の現場に近いところでしたという思いをずっと持っていました。そんな時普段治療をする中で怪我の多い選手がいらっしゃっていて、サポートをしてもらいたいという声をもらって、現場へ出たのが1つのきっかけになりました。
人の動きを見るプロとしての視点で、スポーツ現場を見れることが理学療法士の強み。
Q:スポーツトレーナーとして活動される中で1番理学療法士 の知識と資格が活かされているなと感じられる時はどういう時ですか?
1つは、医療の現場でスポーツドクターが診断を下した様々な疾患・怪我を見ていたので、それと実際自分が現場で経験した怪我の状態をうまくマッチングできたのがまず大きかったと思います。
トレーナーとして現場に入るとどうしても自分で判断して考えていく必要があるので、そのバックグラウンドとしてドクターと共有した 医学知識や現象への理解、評価・治療の経験があったことは、ある意味不安を和らげ自信を持って現場に出ることができたポイントだったかなと思います。
あと、スポーツは色んな動作を繰り返す場ですから、その中で理学療法士的な視点で、「この動きがいいよ」とか「怪我に繋がりそうだよ」とか「パフォーマンス良くなるよ」と接することができるのでそれがすごく良かった。理学療法士は人の動作を診るプロなので、現場に出た時にその強みが1番活かされているなと感じます。
「試合に間に合うかどうか」のせめぎ合いの苦労が、トレーナーの醍醐味。
Q:トレーナーという仕事が難しい、大変だと感じられることは、どんなことですか?
どのスポーツの、どの年代でもそうなんですけれど、試合は日程が決まっています。怪我をした選手が当初の予定では間に合わないが、どうにかして間に合わせなきゃいけない時に1番悩み、苦労をするところなんですね。プロ選手の場合もじゃあ来週の試合に出れるか出れないかっていう判断を、ほんとに現場のトレーナーさんと一緒に考えながら、どうにかして今回は出たいとか 今回はちょっと色んな理由でやめとこうとかっていうその判断のせめぎ合いのところが1番難しい。今でも答えがあるかといえばないんですけど、そこを現場で選手と向き合って話をして、監督と向き合って話して1つの答えを出していくっていう過程が、難しくはあるけど醍醐味と言いますか、それでなんとか復帰させてあげられた時は、本当に仕事冥利に尽きるじゃないですけど、1番達成感がある瞬間だなと思います。プロスポーツ選手は本当にそれで人生がかかってたりします。自分の評価で来シーズンの契約か決まってきたりするので、こっちが勝手に選択肢を断つって簡単にはできない判断なんです。そこをいろんな人と調整しながらやってきたっていうのはすごくいい経験になったなと思います。
選手と一緒にその瞬間を共有できる感動は、癖になります(笑)
Q:トレーナーとしてのやりがいを最も強く感じた時はどういう時ですか?
そうですね、やっぱりスポーツの現場って 医療の現場にいるだけだと見れない、勝ったとか負けたとか、できるようになったとか動けるようになったとかを間近で見ることができる、その喜びを一緒に分かち合えた時っていうのが1番の醍醐味かなと思います。やっぱりそれは病院の中では感じられない。後で報告を受けて「良かったね」と、それはそれでうれしいんですが、 やっぱり一緒にその瞬間を共有できるっていうのはやっぱり現場でしか味わえないことで、それはいくつになってもすごく興奮する、感動する瞬間かなと思いますね。本当にそこが1番癖になる感覚で(笑)、それを求めてまた頑張ろうと思っているので、そこが1番のやりがいかなと思います。
向いている人?共通するのは、気づいてあげられる人かな。
Q:理学療法士に向いている人、トレーナーに向いている人はどんな人だと思いますか?
まず、共通するところは、気遣いができるっていうか、気づいてあげられる人って本当に向いているなと思います。 相手のちょっとした変化とか何か表情の違いとか、そういったものにすぐ気づいて動いてあげることができるっていうのは、理学療法士であっても現場のトレーナーであってもすごく大事なポイントだと思います。やっぱそういう人が いろんな意味でサポートもすごく素晴らしいですし、上手な方が多いかなっていう印象はあります 。
理学療法士になるともっと直接触れて治療してという繊細なところなので、自分の感覚と選手の感覚をすり合わせられる人かな 。今スマホ文化で子供たちも二次元の空間に寄ってしまっている事も多くて、高校の指導者さんと話すと、スマホに没頭している子はコート上にいると 、そこに自分を存在させることが難しくなっちゃう、実際の空間が認識できない、相手との関係性がうまく捉えられなくなる子が結構多いっていうのを聞いて、確かになと。やっぱりこのリアルな現場の感覚っていうのを研ぎ澄ませていける人は 治療もすごく上手ですし、人の変化をより引き出してあげられる人かなと思うので、ちょっとスマホ取り上げて教育したいなって(笑)
現場のトレーナーとなると今度はもっとキャプテンシーみたいなところですかね。選手に対して教育的な要素が必要になってくるので、リーダーシップを取るようなキャラクター、引っ張っていくようなことが、人数が多かったりすると結構求められる。そういう意味では柔らかさと強さみたいな人間の 性格的な要素も求められるところは、もしかしたら理学療法士とトレーナーは違うかもしれないなとは思います。
まずは現場に出て!現場を知れば、何を学ぶべきか、どんな存在になりたいのか、自然に固まってくる。
Q:理学療法士の資格をとって、またトレーナー活動をしていきたいとか考えている方にアドバイスをお願いします。
スポーツに関わりたいという中で、理学療法士を選ぶということはすごく素晴らしい判断だと思います。 その理由は、さっき言ったような動作を診ることができ、かつ治療もできて、その動きを変えてあげられる、怪我をしない選手にしてあげられるっていうのは理学療法士の大きな強みなので、それができる人材ってやっぱりスポーツ現場には貴重で求められる人間だと思うんです。 その上で、 僕はどちらかというと早く現場を見なさいっていう思いが強いです。やっぱり現場で何が求められているかっていうのを知ると、必要なことを 学びたいと勝手に思えると思う。困っている選手のために何かしてあげたいって思うのは人間の性かなと思うので 、高校生であっても自分が経験してきた部活動でどんな怪我で困ってるのか、どんなパフォーマンスの悩みがあるのかなどを見に行って、聞いて感じてくれると、じゃあそれを勉強に活かそうねっというその次のステップに進めると思います。だからどんな現場でもいいから一旦顔を出してみなよって言いたい。特に何かできなくてもいいし、いたから、いなかったからとか対応ができるかできないかで誰かが困るとか、別にいなくてもそれは起こることなので、1回はちょっと見てみて必要なことを早く感じてアクションを起こした方が多分いい循環を踏んでいけるんじゃないかなと思う。ぜひ最初の1歩を踏み出していただけると、より思いが強くなって自分の活動を後押ししていけていいかもしれない。自分がどんな存在になりたいかっていうのがだんだんそれで固まってくると思う。
現場に求められた時、そこにいてくれる人が1人でも増えてくれたらうれしい
Q:スポーツに関わる仕事をしたいと考える方に一言お願いします。
世間一般にスポーツで就職するとか現場に行くのは厳しい難しいっていう風を、 皆さんたくさん受けて、最初にスポーツに関わっていきたいと思った人たちが、どんどんいなくなっていってしまう。これは全国的にどこもそうなんです。今ある現場とか、与えられている現場とかは確かに少ないかもしれないですが、いろんな現場に行かせてもらうと、誰かにサポートしてもらいたいっていうところがアマチュアであっても結構多いです。ただ、行く人がいない、そんな相談を受けても紹介する人がいないっていうのが、ずっと悩みなんです。そこに世間の逆風に遭っても頑張って自分の信念を貫き通した人がいてくれたら、求めている人はいっぱいいるんで、そんな人が1人でも増えてくれることが本当に何よりの願いです。スポーツを仕事にするってなっちゃうと本当に大変って思ってしまうけど、別にそこに就職とかしなくても、他で働きながらちょっと現場に出るみたいなスモールステップを踏んでくれる方が増えてくれたらすごく嬉しいなと思います。
スポーツの現場で頑張りたいって火種があれば、それを大事にして続けていってもらうだけでも救われる人が1人でも増える。そっちの方がすごく大事なので そういった形でちょっとずつでも輪が広がってくれると嬉しいなと思います。
沼澤先生ありがとうございました!!
宝塚医療大学 理学療法学科
助教授 沼澤 俊先生
沼澤先生 プロフィール |
【学位】 2024年 3月 吉備国際大学大学院 保健科学研究科保健科学専攻 博士(保健学) 【資格】 2010年 4月 理学療法士免許 取得 2018年 9月 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー資格 取得 【職歴】 2010年 4月 医療法人Nクリニック(~2022年3月) 【担当科目】 スポーツトレーニング論、スポーツ傷害理学療法学演習、検査測定Ⅰ |
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